高齢者の下痢は加齢から

高齢者下痢は加齢に伴う衰えから

高齢になると頻尿や頻便に悩まされる人が多くなってきています。頻便には下痢、軟便の方もおられます。

高齢者の便秘も困るけど、下痢も困ります。特に急性の場合は、本人の体調そのものも心配になります。本人も辛いですし、介護側もショックです。高齢者の下痢の原因にはどんなものがあるのか、ご一緒に考えてみましょう。

高齢者の下痢の原因

疑われる原因として、細菌やウイルスによる感染症、日常生活で発生する冷たい物の摂りすぎ、寝冷え、暴飲暴食、人によっては牛乳・乳製品が体に合わないこともあります。
飲酒、ストレスになどによっても日常的に発生します。また加齢と共に消化機能が衰える事もあります。時には意外な疾患が潜んでいることもあります。

急性下痢の場合

●食中毒やウイルス性腸炎
食中毒の原因菌は時代とともに変化してきています。魚介類に付着する腸炎ビブリオの食中毒が多くを占めていましたが、近年食生活の欧米化に伴い、乳製品、肉類、卵などの食材が増えるにつれ、サルモネラ菌や、カンピロバクターなどの菌が増加してきました。

また、ボツリヌス菌や、病原性大腸菌O-157のような生命を脅かす菌も多く見られ、食中毒は要注意な疾患です。食中毒は夏に限らず、冬にも見られます

食中毒は予防できます。菌を、「付けない」「増やさない」「死滅させる」ことが3大原則です。

食中毒の種類

・感染型:サルモネラ、カンピロバクターなど
汚染された食品中にはいっている菌が体内で増殖し、腸炎を起こし、腹痛、下痢、血便などが見られます。

・生体内毒素型:腸炎ビブリオ、病原性大腸菌など
体内に侵入した菌が毒素を発生します。菌により毒素は異なりますが、腹痛、下痢、発熱などが見られます。

・毒素型:ボツリヌス菌、黄色ブドウ球菌など
食品内で増殖した菌が作り出す毒素を摂取することによって発症します。「感染症」と言うよりはまさに、「中毒症」です。神経症状がみられることがあります。

特に注意が必要な食中毒菌はサルモネラ菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、カンピロバクター、病原性大腸菌です。

①サルモネラ菌・・鶏卵・肉類

②腸炎ビブリオ・・食品は生食魚介類  
③黄色ブドウ球菌・・調理者の介在から
④ボツリヌス菌・・缶詰・瓶詰め」真空パック
⑤カンピロバクター・・肉類
⑥病原性大腸菌・・肉類、家畜、ペット、井戸水
⑦ノロウイルス‥集団胃腸炎となり、冬季を中心に流行

●下痢になる食品アレルギー

食物アレルギーとは、アレルギーの原因となる食物を摂取した後に、食物中に含まれるたんぱく質などが消化管から吸収され、アレルギー反応を引き起こすことです。

食物アレルギーの主な症状は皮膚や湿疹、かゆみ、じんましんなどの皮膚の症状が多く見られ、その他、喉のかゆみ、口、唇などの違和感や腫れ、腹痛、下痢、呼吸困難、目の腫れなど様々症状が現れます。

アレルギー症状が現れるのは比較的早く、食物摂取後1~2時間以内で、特に15分以内に現れることが多いです。また、アレルギーがひどくなると、いくつもの症状が現れ、血圧低下や意識障害になどのアナフィラキシーショックを引き起こし、最悪死に至ることもあります。

●下痢になる急性腸炎

病原体となる細菌やウイルスが胃腸内に感染することで発症します。例えば冬に患者が増えるウイルス性胃腸炎の中でも特に主要な病原体であるノロウイルスは、ノロウイルスが付着したカキなどの二枚貝を生や十分に加熱していない状態で食べることで感染します。

下痢や腹痛、嘔吐や発熱という症状が出ることが多い。

●下痢だけでない高齢者の風邪は注意

寒さも一層厳しくなる時期は、高齢者は風邪にも気を付けましょう。誰でも風邪をひくことはありますが、特に高齢者が風邪をひくと、抵抗力が低下しているため肺炎などを合併しやすく、注意が必要になります。

ただの風邪だと思って重篤な状態になりつつあるのに見過ごされてしまう場合もあるのです。ポイントは「いつもと違う」など違和感があれば、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

慢性下痢の場合

●過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、主として大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気の総称で、腫瘍、炎症性腸疾患のような病気がないのに、腹痛、便秘、下痢が起こる病気です。

消化器科受診患者の半数近くを占めていると考えられる程多い疾患ですが、種々の検査で異常が見られないために適切な治療が施されな
いことが少なくありません。原因はストレスによるものが多いと言われています。

20~30歳代の若い人たちは、いろいろと悩むことが多く、また生活の環境も変化するのですが、70~80歳代もまたいろいろ悩む時期といえます。この時期には生活環境が大きく変わります。定年になり職場を離れ、うちの中でもいろいろと立場が複雑になり、ストレスを受けるといわれています。

●潰瘍性大腸炎

高齢化社会が進むにつれ潰瘍性大腸炎における高齢患者数が増加しつつあります。高齢期になって初めて発症する患者数も増加傾向にあり、最近の高齢期発症患者は必ずしも軽症とは限らず時には重症化あるいは難治化することが少なくないことが報告されています。

高齢者は非高齢者に比べ全身免疫能や代謝能が低下していることや各種合併症を有することが多いようです。症状として血便、下痢、腹痛、体重減少、発熱が挙げられます。

●糖尿病

65 歳以上の方の糖尿病が疑われる方が5 人に1 人と推定されています。高齢になると糖尿病になりやすい理由は、加齢に伴うインスリンの分泌の低下、日常の活動量の減少に伴う筋肉量の減少、そして肥満の増加などにより、インスリン抵抗性が増大すると考えられています。

糖尿病による下痢は自立神経障害の強い人(とくに長期間血糖コントロール不良の人)に多くみられ、このため、ますます糖尿病のコントロールが乱れてしまいます。

ふだんから血糖のコントロールを良くしておき、下痢の場合には水分の補給を十分に行いましょう。また、下痢による低血圧の注意も必要です。

●吸収不良症候群

消化器は予備的な機能を兼ね備えている臓器であり、他の臓器と比べると、加齢による影響は少ないといわれていますが、高齢者にも消化器の病気は多く見られています。消化器が老化したことによって、食べたいものが食べられなくなっている人もいます。

吸収不良症候群は、消化・吸収の働きが低下することで、食物中の栄養素が十分に吸収されずに起こる病気の総称です。

吸収不良症候群は、消化・吸収に関わる胃、十二指腸、小腸、膵臓、肝臓、胆道などの臓器に何らかの病気が生じたり、臓器を切除したりして食物の消化・吸収が十分に行われなくなった結果、起こります。

体に必要な栄養素が十分に吸収されないことで栄養障害が起こり、下痢、脂肪便、体重減少、貧血、全身倦怠感、浮腫(ふしゅ)などさまざまな症状が現れます。

●大腸がん

同じ大腸がんでも、大腸のどこにがんがあるかで症状は変わってきます。大腸がんに伴う症状としては、いくつか挙げられますが、便秘や下痢、便が細くなったり、腹痛、腹鳴、腹部膨満、貧血、体重減少などがあります。

また便秘や下痢をくりかえすこともあります。特に高齢者は、単なる便秘と思っていて、それが大腸がんが原因であることも珍しくありませんから、高齢者の便秘は大腸がんを疑うことが早期発見につながる場合があります。

●その他の消化器系疾患

高齢者人口がますます増加し、加齢とともにあらゆる臓器、器官の機能が低下してきます。そこに何か病気などの負担が加わると容易に身体の生理的平衡がくずれ、重症化してきます。

明らかな悪性疾患や消化器疾患がないのにもかかわらず、下痢、食欲不振、その後に体重減少、低栄養状態となる事があります。

高齢者では、一度低栄養状態となるとなかなか改善せず低免疫状態となり容易に肺炎などの感染症を併発して、さらに栄養状態の悪化をきたすと言う悪循環に陥りやすく、下痢の改善も難しくなります。

高齢者の下痢が続く時の注意

●水様性の便の場合
水様便は急性の感染症の症状として現れます。細菌やウイルス性の感染症によるもので、数日内に止まる一過性の下痢です。水様性の便が出はじめてから、長くても2週間程度を経過すると治まるのが普通です。

しかし、水様便の下痢が長く続くと十分な栄養摂取が出来ないだけでなく、重要なミネラル成分が排出され、激しい場合には脱水症状にもなりやすいため、早めに下痢症状を止めなければなりません。

特に、出血のある便は要注意です。出血多量の場合は、貧血が起きたり、倦怠感が見られることもあります。

動悸が激しくなることも。早期発見が大事な病気。こうした症状が見られたら、すぐに専門医へ行きましょう。水様性の便が続く時には水分補給がとても重要となります。

●軟便の場合

軟便の下痢は、急性疾患の症状としてだけでなく、ほかに体の異常がないときにも見られる現象です。便が緩くなる軟便は、これは順調の証と言ってもよいでしょう。

下痢が「病原菌の侵入」に起因するのに対し、軟便は腸内細菌叢の善玉菌たちが元気にたくさん増えた時にも起こります。例え軟便でも、出してスッキリしていれば「順調」なのです。一日何回出ても、0Kです。

午前中に3回出ようと
も、出す度にスッキリしていたら「軟便」であり、「順調」と判定して下さい。あと、大便の2/4は腸内細菌、1/4は剥がれ落ちた腸の粘膜細胞、1/4が食物残渣と言われているので、腸内細菌が増えれば大便の量が増え、軟便が改善されます。

軟便ではそれほどの危険性がないため、さほど気にせずに放置して習慣化している人も多く見られます。健康時の便は水分量が約60%、軟便は約70%と言われており、意外とわずかな水分量の違いです。軟便は、食事に気をつけるだけで改善する可能性があります。

便の水分量を60%に近づけるため、負担をかける飲食物を避け、消化吸収の良い食品を摂るようにしましょう。

●便秘と下痢の繰り返し

高齢になると腸の機能が低下し、便秘がちになります。そうなると下剤を服用することになり今度は下痢気味になります。 こうしたことの繰り返しで、腸内環境が悪化し、慢性的な下痢になる場合があります。
あるいは精神的なストレスで、下痢と便秘を繰り返す人もいます。いわゆる過敏性腸症候群で、下痢と便秘が交互に現れ、腹痛・腹部の違和感を伴うこともあります。

過敏性腸症候群の下痢の直接的原因は大腸の機能異常によるものですが、その異常は、不安・緊張などの精神的ストレスや過労、不規則な生活、暴飲暴食などによる自律神経の異常に起因するとされています。

下痢で水分が不足している場合は、水分補給に心掛けるとともに、スポーツドリンクやサプリメントでナトリウム・カリウムなどの補給も行いましょう。

●下痢の際の食事と水分摂取法

下痢の時は急性、慢性に限らず、水分はまめに補給しましょう。体液が失われると脱水症状になってしまいます。人肌くらいのお湯や砂糖水などがベスト。温かいお茶もよいでしょう。
急性の場合は、食べ物は控えておき、様子が落ち着いてきたら消化の良いものを食べましょう。はじめは半流動食、その後、三分粥、五分粥などにしてゆきます。

問題がなければ、卵などのタンパク質もとるように。ただし、量は少なめに。熱すぎるもの冷たすぎるのもおなかに良くありません

腸内環境を強化しよう

「元気の元は胃腸から」と昔から言われています。生活習慣による病気の9割は腸内環境が悪化したことが大きな原因となります。

高齢者は食べる量も少なくなり。偏った食事になります。そのため栄養不足に陥ることもあります。栄養状態が悪いとますます。体の不調は悪化しがちになります。悪循環となります。下痢の改善も難しくなります。栄養バランスに気をつけましょう。

また、高齢になると消化器官をはじめ全ての臓器が衰えてきますので、早くから腸内環境も整えて、若さをキープするのはとても重要な事です。

腸内環境を整えると、腸内で行われる活動が正常化され、健康増進に繋がります。下痢も改善されます。腸内環境を整えるサプリメントがありますので上手に利用しましょう。