急性下痢と慢性下痢Ⅱ

下痢が続く原因・急性下痢と慢性下痢 Ⅱ
単に下痢と言っても、急性なものと、慢性なものがあります。

慢性下痢は2週間以上続く下痢の事を言いますが、急性の下痢とは原因や対処の方法が異なります。

ではどのような違いがあるのか見てみましょう。

下痢の原因

まず下痢がどのような状態かを見てみましょう。
下痢の原因としては、腸粘膜の水分分泌が亢進した場合や、腸の粘膜からの水分吸収が妨げられた場合、腸の運動が異常に激しくなった場合などがあります。

そのほか、腸内細菌が異常に増殖した場合や、食物の消化や吸収が悪い時にも下痢をすることがあります。


目次
・細菌性の下痢   ・ウィルス性の下痢   ・非感染症の下痢  ・①乳糖不耐症  ②アレルギー性の下痢 ・慢性の下痢  ・下痢になった時の家庭での対処の仕方 ・腸内環境を整えよう 

●急性下痢の原因

急性下痢には感染症下痢と非感染症下痢があります。

感染性下痢は急性の下痢となり、細菌やウイルスなどが原因で起こります。感染性下痢は発熱や腹痛、吐き気などを伴うのが特徴です。便の細菌培養検査で診断しますが、ウイルス性の下痢では確定診断が困難です。

●感染症下痢

・細菌性下痢
細菌性腸炎は食中毒などといわれ、 夏場に多い傾向があります。

起因菌によっても異なりますが、一般に原因となる食べ物を摂取してから、5~72時間の間に発症します。

魚介類の加工品、肉、卵、カキ氷、いずし(ニシン、アユ、ハタハタなどの保存食品) などで起こることがあります。

これらの食事を摂取し、暫くして下痢や腹痛の症状が出た時には食中毒を疑ってみる必要があります。

多くの人が同時に起こる場合もありますが、体力や免疫力などの差で同じ食べ物を摂取してもかかる人とかからない人がいます。

特にいずしなどの摂取後に起こるポツリヌス菌と日われる細歯による食中毒は、眼瞼下垂(まぷたが下がつてくる)、複視(ものが何重にも見える)、発語障害(言葉が話しにくい)などの神経症状が出ることがあり、 重症な場合は死亡することさえあります。

・ウイルス性下痢
ウイルス性胃腸炎は嘔吐下痢症などとも言われ、どちらかというと冬場に多い感染症です。

よく知られているウイルスにはロタウイルス、 アデノウイルス、 アストロウイル ス、 ノロウイルス、 サッポロウイルスなどがあります。

何れのウイルスも口から入ったウイルスが十二指腸から小腸の粘膜上皮に感染することで発病します。

感染した腸管はむくんで水っぼくなり、 嘔吐や腹痛、下痢、発熱を起こします。感染力が強いので、トイレの後、食事の前後、調理時には手洗いは欠かせません。

症状や対応方法はウイルス性腸炎とほぼ同じです。但し、基本的に下痢止めを使用してはいけません。症状を慢性化させたり、悪化させたりする事があるからです。
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●非感染症下痢の原因

発熱を伴わない急性の下痢は、たいてい非感染性下痢です。

ほとんどは食べすぎなどによる食事性の下痢で、それ以外には冷たい牛乳を飲むと起こる乳糖不耐症、エビやサバなどの魚介類や卵などの食品に対するアレルギー性下痢などがあります。

また、血管が狭くなって腸に血が通いにくくなり(虚血)、出血を伴う急性の下痢を来す場合もあります。
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①乳糖不耐症

乳糖(ラクトース)はガラクトースとブドウ糖(グルコース)が結合した2糖類で、母乳や牛乳などに含まれる栄養素です。

口から摂取された乳糖は小腸粘膜に存在する乳糖分解酵素(ラクターゼ)によって分解されて、小腸粘膜より吸収されます。

乳糖不耐症では、この乳糖分解酵素が生まれつき欠損したり、少量しか産生されないために、酵素活性が低く、小腸での乳糖の分解がうまくいかずに不消化の状態で腸内に残ります。

分解されなかった乳糖は大腸のなかで腸内細菌によって発酵し、脂肪酸と炭酸ガスおよび水になります。

発生した炭酸ガスや脂肪酸は腸を刺激して蠕動を亢進させます。

また、不消化の食物のカスにより大腸のなかの浸透圧が高くなるので、腸管の粘膜を通して体のなかから水分が腸管のなかに移動し、下痢を引き起こします。

・先天性乳糖不耐症
乳糖不耐症は先天的なものと後天的なものに分けられます。遺伝的に乳糖分解酵素を持っていない人は先天性乳糖不耐症です。

・後天的乳糖不耐症
乳糖分解酵素は小腸粘膜の先端部位にあるため、小腸粘膜が傷害される多くの病気で二次的に酵素活性が低下します。これを後天性(二次性)乳糖不耐症といいます。

乳児ではウイルスや細菌による腸炎のあとで腸粘膜が傷害されて、酵素活性が低下することがよくあります。小腸を休ませて粘膜が回復すれば、また乳糖を分解することができるようになります。

ミルクが主食の乳児期には乳糖分解酵素は十分に作られますが、成長するにしたがって特別な病気がなくても、次第に乳糖分解酵素活性が低下します。

日本人では大人の約40%で乳糖分解酵素活性が低いといわれています。

これはミルクを多く摂取する食習慣をもたなかったためと推測されますが、このような状況で大量の乳製品を摂取するとおなかの調子が悪くなります。
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②アレルギー性の下痢

アレルギー性腸炎は、特定の食品を摂取すると胃痛・腹痛・下痢・嘔吐・湿疹・じんましん・気管支喘息・血便などの症状を引き起こします。

重篤な場合では全身に症状があらわれ、呼吸困難や血圧低下・アナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。

子どもがこの病気にかかり、下痢と腹痛を繰り返すと治りにくくなることが多いので注意が必要です。

・アレルギー性腸炎の原因
アレルギー性腸炎とは、特定の食物がアレルギーの原因物質であるアレルゲンとなって腸内で過敏症状を示す疾病です。

卵や牛乳及び大豆がアレルギー性腸炎を引き起こす3大アレルゲンです。

また肉や魚なかには米もアレルゲンとなる人もいます。アレルギー反応は体調不良も引き金となる傾向があるので、体調を整え栄養を充分に摂取すると発症を抑える事が出来ます。
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●慢性の下痢

慢性下痢の約半数は、ストレスによる過敏性腸症候群という機能性異常です。慢性膵炎(すいえん)などの膵疾患や、胃がんなどでも消化不良から下痢を起こす場合があります。

消化器疾患以外でも、糖尿病や甲状腺機能亢進症こうじょうせんきのうこうしんしょう、婦人科や泌尿器系の病気などで下痢になることがあります。

・過敏性腸症候群
この病気は、日本を含む先進国に多い病気です。

日本人では10~15%に認められ、消化器科を受診する人の3分の1を占めるほど、頻度の高い病気です。

発症年齢は20~40代に多く、男女比は1対1.6で、やや女性に多くみられます。便通の状態により、便秘型、下痢型、交代型の3つに分類されますが、男性では下痢型、女性では便秘型が目立ちます。

①下痢型
突如として起こる下痢が特徴です。突然おそってくる便意が心配で、通勤や通学、外出が困難になります。また、そうした不安が、さらに病状を悪化させます。

②便秘型
腸管がけいれんを起こして便が停滞します。水分がうばわれた便はウサギの糞のようにコロコロになり、排便が困難になります

③交代型
下痢と便秘を交互に繰り返します。
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下痢になった時の家庭での対処のしかた

①下痢止めを使用しないこと
下痢の原因がわからないままに、下痢止めを使って症状だけを止めてしまうのは好ましくありません。

とくに急性の下痢は腸内の悪いものを速く排出しようとしている状態なので、下痢止めを使うことで症状が重くなり、治りが遅れる場合があります。

発熱や腹痛、嘔吐などの症状を伴ったり、粘液やうみ、血液が便に混じったり、臭いや色のおかしい便が出る時は、内科を受診してください。

②水分補給をしっかりすること
下痢の場合は、体外に水分が失われるので水分補給が大切になりますが、同時にナトリウムやカリウムなどの電解質も失われるので、それらの補給も必要です。

スポーツ飲料などが吸収もよくおすすめです。

果汁飲料もよいのですが、腸への過度の刺激を避けるため、冷たすぎるものや柑橘類、炭酸飲料などはやめましょう。糖分補給も必要ですが、糖濃度が濃すぎるとかえって下痢を誘発します。

③食事は消化の良い物を摂ること
食事は吸収がよく刺激の少ないものにします。

とくに香辛料やアルコール、脂肪の多い食事、不溶性食物繊維、固すぎるものは避け、よく嚙んで食べるようにします。

緑黄色野菜はビタミンやミネラルが豊富なので、裏ごししたり柔らかく煮て食べます。

また、一度に大食すると負担が大きいので、少量ずつにして食べる回数を増やしてください。
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腸内環境を整えよう

「元気の元は胃腸から」と昔から言われています。

食べた物を消化・吸収・排出の基本がしっかりされていないとさまざまな症状に悩まされてしまいます。

まずは腸内環境を整えましょう。

腸内環境を整える食事あるいはサプリメントがありますので上手に利用すると速く症状が解決できます。