子供の下痢と下痢時の食事

下痢の原因・小児の下痢と下痢時の食事

子供が下痢になると、とかく母親はオロオロするものです。下痢の原因が分からずあれこれ悩んでしまいます。



しかし、正しい子供の下痢の知識があれば安心するものです。では子供はどんな時に下痢になるのか、その対処法や食事を考えてみましょう。

小児の下痢の特徴は急変する

小児とは15歳以下、幼児は6歳以下、乳児は1歳以下です。ちなみに乳幼児は3歳以下です。

例えば、離乳食をまだ始めていない母乳栄養の乳児は、軟らかい便を頻繁に排泄します。

このような乳児の便は正常ですが、突然、回数が増えたりいつもより便が軟らかくなったり、水っぽい便が24時間以上続く場合は決して正常でありません

何らかの原因で下痢が起きています。

下痢の小児には、食欲の低下、嘔吐、体重減少、発熱がみられることがあります。

下痢が重い場合や長く続く場合は、脱水が起こる可能性がありますので注意しなければなりません。

特に乳幼児はすぐに脱水状態になりやすく、脱水状態となるまでに1日もかからないこともあります。

重症の脱水では、けいれんや脳の障害が起こり、死亡することもあります。

世界の下痢による死亡数は年間200万~300万であり、ほとんどが発展途上国でみられます。

米国では、5歳未満の小児の入院の約9%が下痢によるものです。

下痢は身体の正常反応だが下痢は体力低下を招く

食事と下痢は切っても切れない相関関係があります。人は食べる事で健康を維持します。

その食べたものが良いか悪いか全て腸内が判断し、区別するのです。

実際悪い物を食べた時、早く体から追い出そうとして、大腸や小腸の運動が普通の状態よりも活発になり下痢になります。

下痢になったからと言って、一概には悪いとは限りません。むしろ、体にとっては好ましい反応です。実に人の体は良くできています。

しかしこれは腸内環境が正常な場合です。

近年この腸内環境が悪化しているため、腸内で悪いものか良いものか区別が難しくなり、ちょっとしたことでも下痢を起こしやすくなってきています。

さて、下痢をすると、食べ物を早く追い出そうとして、水分、栄養が充分に吸収されません。

そのため下痢の時には体から水分が減って脱水症状になったり、ミネラルが減って体力の低下を招きます。

下痢の原因は何?

下痢の原因の多くはウイルスや細菌などの感染によるものです。

しかし、単なる食べ過ぎや消化の悪い物を食べて下痢になる、あるいはアレルギーによるものや心因性のものなどがあります。

下痢の原因は、急に始まる下痢と、慢性的に続く下痢で少し異なります。

急に始まる下痢の主な原因としては、ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど)や、細菌(食中毒)による感染性胃腸炎が考えられます。

これに対し、持続性下痢といって慢性的に下痢症状が続くものもあります。

持続性下痢の原因は、吸収不良症候群や反復性軽症下痢、腸炎後症候群などが挙げられます。

・ウイルス性下痢、細菌性下痢

子どもの下痢の原因は、大半がウイルスの感染によるものであり、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスが代表的です。

ウイルス性の下痢ではしばしば吐き気や嘔吐、発熱、腹痛、頭痛、咽頭痛を伴うこともあります。

ウイルス性の下痢のほとんどは軽症で、発熱や嘔吐が1〜2日続きますが、一般的には約1週間で下痢がおさまります。

・細菌性下痢

乳児期以降の子供では食中毒にかかることがあります。食中毒の原因はカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌といった細菌です。

細菌感染には抗菌薬を使用するというイメージがありますが、毒素が多量に排出されていなければ抗菌薬は使用しなくてもよいといわれています。

毒素を排出する菌の感染または合併症をおこさなければ、重症になることはほとんどありません。

・乳糖不耐症と吸収不良症候群
乳幼児では、下痢が長引き、特に乳製品を摂ると下痢が悪化することがあります。このときは、乳糖不耐症を疑ってみましょう。

ほとんどの乳糖不耐症は、ウイルス性胃腸炎に引き続き発症する「二次性」乳糖不耐症です。「先天性」(生まれつき)の乳糖不耐症とは異なります。

胃腸炎によって下痢を起こした後、乳製品(育児用ミルクや母乳も該当)に含まれる乳糖を分解する力が弱くなっているために起こることが多いといわれます。
この場合は1~2週間程度で治まります。

二次性乳糖不耐症の子どもに対しては、乳糖不耐症用のミルク(ラクトレス®、ノンラクト®、ボンラクト®など)が販売されています。

これらのミルクは、ドラッグストア等で購入することができ、下痢の原因となる乳糖を含みません。

下痢が始まって1週間が経過しても治らない場合は、乳糖不耐症用ミルクに変えてみましょう。

下痢になったら困る理由は栄養低下

では、下痢はどうしていけないのでしょうか。

下痢をするということは不快感や腹痛や食欲不振といった症状が多く、時には嘔吐や発熱を伴う場合もあり大変辛いものです。

でもなんといっても栄養分の吸収が低下してしまうことです。

栄養が摂れないと生命活動が維持できません。

特に子どもの場合は正常な発育ができなくなります。

また、乳幼児の場合は下痢に付随するものとしておむつのかぶれになり、不機嫌になって母乳、ミルク、離乳食などの食欲不振になります。

そのときは脱水症状になる場合もあります。

下痢をしてしまったらどうしたらよいでしょうか。

・乳児の場合
離乳食を始めている乳児は、月齢より以前の時期の食事にし、現在の食事は一時的に中止してみましょう。

機嫌がよくてあまり強い下痢でなければそれだけでよくなるでしょう。

・幼児期の場合
幼児期の場合は乳児期の食事形態に戻してみて、流動食にしてみましょう。

ただし、水分は十分とるように心掛けましょう。

いずれにしても、単に便の回数が多いからといって必ずしも病的とはいえない場合もあります。

体重の経過をよくみて順調に発育していれば悪い下痢ではありません。

ときには、硬い食べ物を食べると硬い糞便がでると誤解されていることもあります。これでは下痢が治るどころか悪化させてしまいます。

いくら子どもが欲しがるからといって下痢のときにおむすびなどを食べさせないようにしましょう。

食べたものが原因での下痢であれば、それを止めれば下痢は止まります。

大人が下痢をした場合、一日くらい絶食して治すこともありますが、子どもの場合は、そういうわけにはいきません。

脱水症状になる恐れがありますので、食事を考慮しながら水分を摂取しなければなりません。

また、子どもの下痢の治療は原則として下痢止め薬で治すのではなく、食事療法によって治します。

機嫌がよく元気であればいいのですが、単なる下痢だけでなくいろいろ症状がかさなり、全身の状態が芳しくない場合は早めに医師の診察を受けましょう。

子どもの下痢では脱水症状に特に注意が必要

感染性の胃腸炎による下痢の場合、多くの子供は嘔吐も起こしています。

胃腸炎による下痢は新生児や乳児など幼い子どもの場合は、重症の脱水症状を起こすこともあるため注意が必要です。

世界では脱水症状が原因で、毎年多くの子どもが死亡しています。

特に、開発国では下痢による脱水症状が死亡要因として大きいといわれています。

年齢の低い乳児期であるほど脱水症状が重症化し、入院や点滴が必要になります。

特にノロウイルスによる胃腸炎の場合は、下痢よりも嘔吐が目立つことが多く、下痢は何日も続きません。

しかし、ノロウイルスなどは僅か100個くらいの菌数で発病してしまいますので、感染予防には注意が必要です。

なお、ロタウイルスワクチンの普及により、ロタウイルス胃腸炎による重症脱水となる子どもはかなり減ってきています。

ウイルス性胃腸炎は周囲にも感染する病気なので、感染を拡大させないために、石鹸での手洗いや排泄物の正しい処理などの徹底が大切です。

細菌性胃腸炎が重症化すると脱水以外の重篤な合併症が起こる

感染性胃腸炎による下痢の場合、原因が細菌・ウイルスのどちらであるかを判断することも重要ですが、細菌による下痢を疑う場合は、脱水以外の合併症にも注意しなければなりません。

腸管出血性大腸菌(代表的なO-157)などの感染が原因となって発症する溶血性尿毒症症候群は重篤な病気になる場合があります。

溶血性尿毒症症候群は菌の出す毒素によって赤血球が破壊されると貧血や血小板減少、痙攣、意識障害、急性腎不全(急激な腎臓の機能低下)などを引き起すため、早急な治療が必要となります。

適切な治療がなされなければ、腎臓に後遺症が残ることもあり、最悪の場合は死に至ります。

大抵の場合、溶血性尿毒症症候群は下痢が出現してから4〜10日後に発症するといわれています。

細菌性の食中毒を疑う下痢の場合は、腎臓の障害を引き起こしてしまう可能性があることを覚えておきましょう。

繰り返す下痢は過敏性腸症候群

お腹が弱く繰り返し下痢をしてしまう反復性の下痢は学童期や思春期(中学生ごろ)などに多く、ストレスなどが影響し、それによってさまざまな身体的な症状が起こる心身症による過敏性腸症候群が代表的な疾患です。

過敏性腸症候群は心身症の病状に沿った治療薬を使うことがありますが、先生の指示に従い、なるべく時間をかけて、子どもの様子を観察しながら治療にあたりましょう。

幼児期の下痢や血便が続く炎症性腸疾患はゼロではない

下痢や血便が持続するけれども下痢の原因が判明しない場合、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を疑うことがあります。

診断には内視鏡検査などの精密検査が必要な場合がります。

炎症性腸疾患の頻度は高くはないものの、現代では幼児期に発症するケースもゼロではないようです。

下痢に対する薬物療法、良いのは腸内善玉菌

下痢に対する薬剤としては、整腸剤・止痢剤(下痢止めのこと)・漢方薬・抗菌薬などが使用されることがあります。

このうち「有効である」と科学的な根拠があるものは、整腸剤としてのプロバイオティクス(善玉菌のこと、人体に良い影響を与える微生物)だけです。

また、細菌性の下痢の場合、抗菌剤は不要です。使用するとしても、長期間使用し続けることは効果的ではないと考えられています。

出来れば使用しない方がいいようです。

下痢からみつかる虫垂炎について

虫垂炎が原因となって起こる下痢もまれにあります。

通常、虫垂炎になって痛むのは右の下腹部と考えられていますが、子供の場合はそうとは限らないようです。

右が痛むばかりではなく腹部全体が痛むケースもあるのです。

子どもの下痢は、基本的に脱水に注意すれば重篤にはなりませんが、急激に症状が現れた際は子供が通常とは違って何かおかしくはないか、見逃さないようにしましょう。

下痢の時の良い食べ物として

消化の良い、刺激物や脂質が少ない食べ物を食べましょう。

また、たんぱく質には水分が吸収されて便を固くする作用があります。

例えば:おかゆ、煮込みうどん、豆腐、半熟卵、白身魚、鶏ささみなど

下痢の時の水分補給によい飲み物

下痢になったら、まず水分を補給しましょう。

飲み物は、コーヒーなどの刺激物を避けて温かいものが基本です。

番茶やほうじ茶は比較的カフェインが少なく、りんごには整腸作用があります。
例えば:味噌汁、にんじんスープ、りんごジュース、ハーブティ、番茶、ほうじ茶など

下痢の時に好ましい食事は「下痢のABC」と覚えておきましょう。

A(Appleリンゴすりおろし)B(Banana バナナ)C(Carrot ニンジンスープ)、お米(お粥)もOK!簡単ですので、これだけでもしっかり覚えておきましょう。

ちなみに母乳はいつでも、どんな時でも大丈夫です。

なぜなら母乳はお母さんの血液だからです。

母乳は血液が変化してできたもので、母親の食べた栄養分が血液内に入り、それを子どもに与えているのです。

治りかけに食事で無理をすると長引きます。

下痢の時の食事の注意

下痢をして体力が弱ってしまっているとき。

なんとか上手に食事をして、早く体に力をつけて、下痢を克服したいものです。下痢時の食事の注意点を見てみましょう。

●下痢時の食事の注意点
①下痢による脱水症状を防ぐために、こまめに水分補給を心掛ける。

②水分補給は麦茶、番茶、スポーツ飲料など、ジュース類や炭酸飲料、コーヒーなどは避ける。

②牛乳は栄養補給には効果的ですが、脂肪などが腸管を刺激するので多量に飲まないようにする。

③お粥など水分や、水分を多く含んだ食事を摂る。

④消化・吸収されにくい食物や刺激物は、さらに腸に負担をかけるので避ける。

⑤食物せんいの多い食品は、消化が悪く胃腸の負担になるので避ける。

⑥1回の食事量を減らし、少量ずつ、何度も食事を摂るようにする。

⑦ゆっくりとよく噛んで食べ、消化管への刺激を和らげるようにする。

⑧腹七~八分目で食べ過ぎない様に、楽しんで食事をする。

⑨腸への負担がいないように、食事の時間を利用してリラックスする。

⑩乳幼児はお尻がただれない為に、下痢の都度、お尻をぬるま湯(石鹸は一日1回のみ)で洗う。

下痢の時食べさせたらダメなもの

①冷たいもの:ジュース(特に炭酸入り)、アイスクリームなど

②刺激の強いもの:コーヒー、香辛料、アルコールの入ったもの

③繊維の多いもの:イモ、ゴボウ、マメ、海藻類など

④脂肪の多いもの:揚げ物、バター、肉、卵、牛乳など

⑤砂糖分の多いもの:カステラ,プリン,ジュース類,果物,お菓子など

石鹸で何回も洗いすぎるとおしりがただれてしまうので、石鹸の使用は一日一回程度としましょう。

胃腸炎は唾液や便を介してうつる可能性があります。手洗い、うがいを心掛けましょう。

●下痢回復後の食事

水分を十分に補給していれば、1~2日、絶食しても心配はありません。

症状が軽くなっても、まだ完全に胃腸の調子は戻っていませんので次の事に注意しましょう。

①脂っぽい料理や糖分を多く含む料理やお菓子などは、腸管に負担をかけるので避ける。

②香辛料の多い料理や食物せんいを多く含む食事は、腸の働きを活発にして下痢症状を悪化させるので、下痢が完全に止ってもしばらくは避ける。

③果物を摂る場合、柑橘類は腸管に刺激を与えるので避ける。

④果物はリンゴのすりおろしなどで胃腸の回復を整える。

⑤消化・吸収のよいおかゆなどを、少量ずつゆっくり食べる。胃腸の回復が完全に戻るまで注意する。

⑥濃い味付けは胃腸を刺激するので、味付けはできるだけ薄味にする。

●腸内環境が悪いと下痢が悪化

頻繁に下痢をする多くの人は腸内環境が悪化しています。消化・吸収、解毒能力が衰えて、口から入る様々な物が(細菌を含めて)上手に対処できなくなっているから下痢になるようです。

又、腸内環境が悪いと免疫力も低下しウイルスや有害細菌が入った時に対処できなくなります。

下痢になったからと言って、慌てずにまずは下痢の状態を観察し、原因を考えながら、食事を見直し、水分を充分に補給しながら、お腹を温めてみましょう。

殆どの下痢は家庭で対処できるものです。しかし、子供の様子は急変することがあります。日頃の状態と比較しながらよく観察して介護しましょう。

腸内環境を整えよう

「元気の元は胃腸から」と昔から言われています。幼い時から腸内環境を整えておくことはとても大切です。腸内環境が整っている小児は病気を寄せ付けません。

下痢が治まったなら、腸内環境を良くする食事や、腸内環境を改善する働きをする善玉菌サプリメントを利用するなど腸内のメンテナンスをしっかりしましょう。

腸内環境を良くするサプリメントがありますので、上手に利用しましょう。子供でも利用できます。