下痢は魚のヒスタミン中毒

下痢の原因はヒスタミンによる食中毒

夏も終わり、秋になると魚が美味しくなります。それに伴い魚介類及びその加工品に起因する食中毒で下痢になる人もいます。

魚による食中毒の主な原因は腸炎ビブリオやノロウイルスのような細菌やウイルスですが、中にはヒスタミンによる食中毒で下痢になる人がいます。

下痢の原因となるヒスタミン食中毒はどんな魚によって起こるのでしょうか。

下痢にもなるヒスタミン食中毒症状とは

ヒスタミンによる食中毒はほとんどが魚介類によるものです。イワシ、マグロ、カジキ、ブリ、アジ等一般にヒスチジンを多く含む赤身の魚やその加工品が原因となります。

通常、食後数分から30分くらいで顔面、特に口の周りや耳たぶが赤くなり、じんましん、発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢等の症状をおこします。

症状は比較的軽く、通常6〜10時間で回復しますが、重症の場合には呼吸困難や意識不明になることもあるといわれています。
諸外国に比べて、魚を食する習慣のある日本では、ヒスタミン食中毒を起こす機会は多いと考えられますが、食品中のヒスタミンは法規制されていません。

しかし、米国では水産物に対しヒスタミンの管理が義務付けられています。
重症の場合は、呼吸困難や意識不明になることもありますが、死亡事例はありません。

下痢の原因となるヒスタミン食中毒とは

ヒスタミン食中毒はヒスタミンが多量に蓄積された魚介類やその加工品を喫食することによって起こる中毒です。

ヒスタミンは、魚介類に付着したアミノ酸の一種であるヒスチジンから細菌(ヒスタミン生成菌)によって作られます。

ヒスタミンは、食品中に含まれるヒスチジン(タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一種)にスタミン産生菌の酵素が作用し、ヒスタミンに変換されることにより生成します。

そのため、ヒスチジンが多く含まれる食品を常温に放置する等の不適切な管理をすることで、食品中のヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンが生成されます。

ヒスタミンは熱に安定であり、また調理加工工程で除去できないため、一度生成されると食中毒を防ぐことはできません。

マグロやカツオ、サバなどの赤身魚は、白身魚にくらべヒスチジンを多く含んでおり、これらの魚を室温などの不適切な温度で保管したり、また冷蔵保存でも長期間にわたって保管すると、細菌が増殖してヒスタミンが生成されます。

下記の図はヒスチジンを持つ魚が温度管理が不十分な環境の中でヒスタミンが産生され、食中毒になる過程です。



このようにヒスタミンを多く含む魚やその加工品を食べることでヒスタミン食中毒を発症するのです。
更に、熱に安定であるため、焼き物や揚げ物などの食品でも中毒は起こります。

海外では鶏肉、ハム、チェダーチーズ、ザワークラウトが原因となったこともあります。

ヒスタミン食中毒は細菌が直接的な中毒の原因ではないことから、厚生労働省の食中毒病因物質別分類では化学物質が原因の食中毒に分類されています。

下痢の原因となるヒスタミンを多く含む魚

イワシ、マグロ、カジキ、ブリ、アジなど一般にヒスチジンを豊富に含む赤身魚やその加工品が原因となります。

国内における1998~2008年に発生したヒスタミン食中毒で最も事例数が多かった魚種は、マグロ(33%)であり、次いでカジキ(18%)、サバ(13%)でした。参考に魚種別のヒスチジン含有量を示します。

ヒスタミンは、熱に強いため一度産生されたヒスタミンは通常の加熱調理では分解されず、食品に残ったままとなります。このため焼き物や揚げ物などの加熱済みの食品でも食中毒が発生します。

「加熱するから大丈夫」ではなく、「ヒスタミン食中毒は加熱では防げない」ことに注意してください。

このようにヒスタミン食中毒は、原因食品のほとんどが魚介類ですが、魚以外ではチーズ、鶏及びなどによるヒスタミン食中毒も報告されています。

以下の表は国内におけるヒスタミン食中毒の発生状況です。
各グラフの数字はそれぞれの年度の人数です。

なぜ赤身魚が下痢の原因になるのでしょう?

赤身魚(マグロ、ブリ、サンマ、サバ、イワシ等)に多く含まれるヒスチジンは、ヒスタミン産生菌が産生する酵素の働きで、ヒスタミンになります。ヒスタミンとして100㎎以上食べると、食中毒を発症するとされています。

ヒスタミン産生菌の中には、海水中に存在して漁獲時にすでに魚に付着している可能性があるものがあるのです。

ヒスタミン産生菌には、いろいろな種類がありますが、次のような特徴があります。
①大きく分けると、海水中にいる海洋性細菌と、人や動物の腸管内にいる腸内細菌科の細菌の2種類がいる。

②海洋性ヒスタミン産生菌は、漁獲時にすでに魚に付着している可能性がある。

③腸内細菌科のヒスタミン産生菌は、漁獲後に魚を下処理する時などに、魚に付着してしまうことがある。

④発育しやすい温度は、菌の種類により異なり、25℃~40℃で発育する菌(中温細菌)と、0℃~10℃でも発育する菌(低温細菌)がいる。

⑤低温細菌は冷蔵していても増えるため、生の赤身魚や赤身魚の干物などを長期間保存すると、その間にヒスタミンができる可能性がある。

アレルギー体質だと、ヒスタミン食中毒にかかりやすい?

ヒスタミンによる食中毒もアレルギーと同じような症状が出ますが、食品中にできたヒスタミンを食べたことが原因なので、アレルギー体質とは関係ありません。誰にでも起こる可能性があります。

しかし、花粉症や食物アレルギーの人は、体内にアレルゲン(花粉、食物等)が入ると免疫反応によりヒスタミンが出てくるために、アレルギー症状を起こします。

ヒスタミンは動物の血液や体内組織に存在する生理活性物質のひとつです。
人間の体内では主に脂肪細胞や血液中、脳や臓器などで機能しています。

普段は不活性状態で存在していますが、けがや薬の服用などの外的要因からヒスタミンは活性化します。

さまざまな作用がある中、この物質が過剰に放出されることで引き起こされる代表的な症状がアレルギー反応です。

人間はカビ、ダニ、ウイルス、花粉などの異物が体内に入ると、体はそれを排除しようとします。
この仕組みを「免疫」と言います。

ヒスタミンは免疫の役割を担っていますが、異物を排除するときに自分の体を傷つけてしまうことがあるのです。
そこで傷つけてしまったときに現れる症状を「アレルギー反応」と言います。

ヒスタミン食中毒の例

①平成25年には水産会社が販売した缶詰から、自社基準を超えるヒスタミンが検出されたとして、672万缶にも及ぶ大規模な回収事例も起こっており、食品の安全上重要な問題となっています。

②ある食堂で食中毒で下痢の原因となったカジキと同じ材料を仕入れた別の食堂で検査したところ、カジキのヒスタミン量は少なく、食中毒は起きていませんでした。

下痢を起こしたこの食堂ではカジキを冷凍保管していました。

③「メカジキの味噌漬け」を購入し、自宅で焼いて食べた都民から、食べた時に口の中がピリピリとし、数分後に頭痛、目や皮膚のかゆみ、動悸を起こしたという届出がありました。

この「メカジキ味噌漬け」は、都民が購入した4日前に、販売店で解凍・スライスした冷凍メカジキを味噌だれで和えていました。

加工当日に売れ残ったため、冷蔵ショーケースで保存し、翌日も販売されました。
しかし、この冷蔵ショーケースは温度管理が不十分で、10℃を超えていました。

また、使っていた味噌だれは、他の魚の味噌漬け商品に使用していたものを、取り置いて使っていました。
検査の結果、「メカジキの切り身」と残った「味噌だれ」から、ヒスタミン産生菌を検出しました。

販売中に菌が増殖し、ヒスタミンが蓄積されたために、食中毒が起きたと考えられました。

④複数の福祉施設で、昼食を食べた利用者が直後からじんましんや口のただれ等の症状を示している、との連絡が保健所にありました。

保健所が調査したところ、管内の7施設で利用者105名、職員4名に同様の症状があることが判明しました。

7施設すべてが同じ仕入元から納品された「イワシのすりみ」を使った「イワシのつみれ汁」から大量のヒスタミンが検出され、ヒスタミン食中毒が原因だとわかりました。

⑤社員食堂で昼食を食べた73名のうち36名が、発疹、頭痛、顔が赤くなるなどの症状が出て、16名が入院しました。

患者全員が「カジキの照り焼き定食」を食べており、検査の結果、カジキの照り焼きから高濃度のヒスタミンを検出しました。

この食堂では仕入れたカジキを冷蔵保管していました。
また、カジキが食堂に届くまでの流通時や、カジキを切り身にした加工施設でも、10℃以上に長時間置かれることはありませんでした。

食堂でカジキを調味液に漬け込む間又は冷蔵保管中に、ヒスタミンが生成・蓄積したと考えられました。

ヒスタミン食中毒の予防方法

ヒスタミン食中毒は、原因物質がヒスタミン(化学物質)であることから、化学性食中毒に分類されますが、ヒスタミンを生成する細菌が食品中で増殖することで起こることから、際には微生物による食中毒としての予防が必要です。

特にヒスタミンは一度できてしまうと、加熱などの調理によって分解されないため、食品中で「ヒスタミンを作らせない」ことが一番の予防方法となります。

そのため、ヒスタミン産生菌の増殖と酵素作用を抑えてヒスタミンを生成させないようにするため、原材料(魚の場合には死んだ瞬間から)から最終製品の喫食までの一貫した温度管理が重要です。

そのためには、次のことに注意しましょう。
常温で放置しない
ヒスタミンを生成する菌の中には、10℃以下の低温でも発育する菌が存在しますので、低温で流通している魚介類や加工品であっても注意が必要。

自分で釣った魚でも、速やかにクーラーボックスに入れる等、常温に放置しない
ヒスタミン産生菌はエラや消化管に多く存在するので、魚のエラや内臓は購入後(または釣った後)、できるだけ早く除去する。

③冷蔵でも、長時間の保存でヒスタミンが増えることがあるため、冷蔵の場合でも安心せずできるだけ早く調理する。

④鮮度の低下した魚はヒスタミンが増えている可能性があるので使用しない。

解凍は冷蔵庫で行い、常温での解凍を避ける。

⑥一旦解凍したものを再凍結して使用しない。

⑦食品中にヒスタミンが生成されていても、外観や臭いに変化はありませんが、大量のヒスタミンが含まれている食品を食べた場合は、唇や舌先にピリピリとした刺激を感じることがあるので、その場合は、食べずに処分する。

⑧腐敗により産生されるアンモニアなどと違い、外観の変化や悪臭を伴わないため、食品を喫食する前に汚染を感知し回避することは非常に困難となるので、素早い調理、保存管理などには充分に注意する。

⑨夏の時期、買った魚はその日のうちに食べ、仮に残った場合でも冷蔵庫内での長期保存を避け、速やかに冷凍するよう心がける。

腸内環境を整えよう

「元気の元は胃腸から」と昔から言われています。食べた物は全て胃腸で処理され、栄養・吸収・排出・解毒あるいはホルモンの産生など様々な役目があります。

こうした腸内活動が正常に行なわれて初めて健康が保たれるのです。

ですから腸内環境を整えることは非常に重要です。腸が健康で、腸内環境が良好だと、様々な病気にかかりにくくなります。

腸内環境を整えるサプリメントがありますので、上手に利用しましょう。
下痢の改善も一段と早くなります。